白内障手術で使われるレンズについて
白内障になるとレンズの役割を果たしている水晶体が濁ってしまい、目のかすみやぼやけなどの視力障害を起こし、放置していると濁りが進行して失明に至ります。点眼などでは解消できませんが、濁った水晶体を除去して人工の眼内レンズを入れることで視界が戻ります。
白内障手術で使われる人工の眼内レンズは、問題がなければ生涯使い続けることができ、手入れも必要ありません。単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ、乱視矯正用のトーリックレンズなどの種類があり、患者様の状態やライフスタイル、仕事や趣味などにきめ細かく合わせた選択が可能です。
白内障手術は心身への負担が少なく回復も早い安全性の高い手術です。現在では日帰り手術として行われることが多く、日本では年間約140万件の白内障手術が行われています。
多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの違い
白内障手術で最も多く使われているのは健康保険適用の範囲内で治療が可能な単焦点眼内レンズです。単焦点眼内レンズは、決まった距離にピントが合うレンズであり、その距離にあるものははっきりと見えますが、それ以外の距離にあるものはピントが合わず、はっきり見るためには眼鏡が必要になります。手元にピントが合う近距離用の眼内レンズの場合、近い距離のものははっきり見えますが、遠い場所にあるものは眼鏡をかけないとはっきり見えません。
多焦点眼内レンズは、1枚のレンズに屈折率の違いを計算した特殊な加工を行うことで遠方と中間、あるいは近方に焦点を合わせることができるレンズです。例えばスマートフォンを使っていて目を上げ、そのまま離れた場所にいる人の顔を見分けることができます。
多焦点眼内レンズが向いている方
眼鏡をできるだけ使わずに日常生活を送りたい方には多焦点眼内レンズをお勧めします。 多焦点眼内レンズの方が単焦点眼内レンズよりも優れているということではありません。
単焦点眼内レンズは近方・中間・遠方いずれかの決まった距離に特化してピントが合います。近方の単焦点眼内レンズと、多焦点眼内レンズの近方の見え方を比較した場合には、単焦点眼内レンズの方がよりクリアな見え方になります。ただし、近方の単焦点眼内レンズは中間や遠方を見る際には眼鏡が必要になりますが、多焦点眼内レンズは極力眼鏡をかけずに近方・中間・遠方と広範囲の距離を見ることができます。
選定療養について
これまで多焦点眼内レンズによる治療は健康保険が適用されない自由診療であり全額自己負担でしたが、先端医療制度によって生命保険の先進医療特約に加入している場合には保険会社からの保障が受けられるようになりました。
2020年4月以降からは多焦点眼内レンズを使った白内障手術が先進医療制度から外され、保険診療と組み合わせた選定療養として行われるようになっています。多焦点眼内レンズを用いた手術の場合も白内障手術自体は健康保険適用され、多焦点眼内レンズを用いることで生じる差額を追加で支払います。差額には、通常レンズと多焦点眼内レンズの差額に加え、多焦点眼内レンズを使うことで必要になる手術前後の追加検査の費用も含まれます。
当院で扱っているレンズ
パンオプティクス
三焦点レンズとしては日本国内初の承認を受けています。遠方、近方どちらも見やすく、従来のものより暗い場所での中間・近方の見え方も改善されています。ボケを軽減する非球面構造を持っており、網膜を保護する黄色の着色が施されています。コントラスト感度にも優れています。角膜乱視の矯正も可能であり、幅広い方が快適に使えるレンズです。
レンズの注文から数日で手術を行えるため、日程の調整がしやすいです。
テクニスシナジー
最新の回折型多焦点眼内レンズです。遠方からやや近方までの距離で視力の落ち込みが少ない連続的な明視域が確保されています。薄暗い場所でも見えやすいように色収差を補正するよう設計されています。日中だけでなく夜間もクオリティの高い見え方が期待できます。
テクニスシンフォニー
コントラスト感度の低下を軽減する色収差の補正機能があり、ピントの幅を広げるために回折溝の形状、間隔、高さなどを最適化しています。従来の回折型に比べるとより自然で連続的な見え方が期待できます。デスクワークや運転に適していますが、近方はやや見にくいと言われています。
料金表
レンズ 外観 |
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名称 | テクニス・ シンフォニー | テクニス・シナジー | パンオプティクス |
焦点 | 遠方・中間 | 遠方・中間・近方 | 遠方・中間・近方 |
適応 | 運転 ゴルフ テニス パソコン |
運転 ゴルフ テニス 読書 |
運転 ゴルフ パソコン 読書 |
ハロー・ グレア |
ややあり | ややあり | ややあり |
光学部デザイン | EDOF構造 | 連続焦点 | 3焦点 |
レンズ 料金 (片眼) |
¥198,000(乱視なし) ¥218,000(乱視あり) |
¥240,000(乱視なし) ¥260,000(乱視あり) |
¥280,000(乱視なし) ¥300,000(乱視あり) |