白内障と緑内障
加齢による白内障は自然な老化現象であり、だれもがいずれかかるとされています。大規模な調査でも、80歳以上になると100%近い方が発症しているとされています。早期発見が難しく、早い方は40歳で発症し、年齢を重ねるに連れて発症頻度が上がっていきます。
緑内障も発症者数の多い眼科疾患であり、40歳以上の20人に1人が発症していると疫学調査で報告されています。かなり悪化するまで自覚症状が現れず、視野の大半が欠けてしまう末期になってはじめて気付くケースが少なくありません。緑内障と診断された方の約9割は治療を受けていないことがわかっています。緑内障は進行性の病気で、失われた視野は治療で戻すことができません。良好な視機能を保っていくためには、できるだけ早期に発見して治療を続けることが不可欠です。
視力が落ちた、目がかすむといった軽微な症状で眼科を受診し、精密な眼科検査を行うと白内障と緑内障を併発していたというケースは珍しくありません。軽度の緑内障を併発している場合は白内障手術の際に房水の流路を再建するトラベクロトミーという手術を同時に行うなど、進行度に合わせて患者様の心身への負担を軽減する同時手術にも対応しています。
白内障と緑内障の同時手術のメリット・デメリット
当院では、切開が必要ないトラベクロトミーマイクロフックを使った低侵襲緑内障手術MIGSを導入することで、患者様の心身への負担を最小限に抑えながら、白内障と緑内障の治療を可能にする同時手術を行っています。
メリット
白内障手術で濁りがなくなると緑内障の検査である視野検査やOCT、OCTAを高い精度で行うことができ、より適切な治療に大きく役立ちます。また、それ以外の疾患の早期発見にも有効です。
白内障手術と緑内障手術を同時に行うことで眼圧を下げられ、緑内障治療で使われる点眼薬の減薬や休薬につながる可能性があります。点眼の煩わしさが軽減されるとともに、充血や炎症といった点眼による合併症の軽減も期待できます。
患者様の目の状態や緑内障の進行状況によっても変わりますので慎重に判断して選択することが重要です。
デメリット
手術なので、術後感染をはじめとした合併症のリスクはゼロではありません。
ただし、単独の手術でも同時手術でもリスクは同じであり、同時に行う方がリスク低減につながります。また、術後感染を防ぐために、術前と術後の点眼などを指示された通りにしっかり行うことが重要です。
早期発見・早期治療が重要です
白内障と緑内障は加齢によって発症しやすい病気であり、どちらも進行させてしまうと見る機能に深刻な影響を及ぼします。ただし、全く異なる病気であり、原因や治療法も違い、同時に発症することも珍しくありません。
特に大きく異なるのは、白内障は手術によって見る機能を改善できますが、緑内障は進行してしまうと視神経の回復が困難であり、進行を抑制する治療しかできないことです。こうしたことから、緑内障は早期発見と適切な治療を続けることが非常に重要となります。
当院では、患者様の目の状態、疾患の原因やタイプ、ライフスタイルなどにきめ細かく合わせた治療方法をご提案し、患者様と相談しながらできるだけ負担の少ない治療を行います。
どんな些細なご質問にも丁寧にお答えしていますので、目の症状、治療や手術などについて、少しでも不安やお悩みがありましたら、気軽にご相談ください。