緑内障の濾過手術について
点眼薬などによる薬物療法やレーザー治療で、目標となる眼圧まで下げられなかった場合に手術が検討されます。房水の排出は、フィルターの役割を果たしている線維柱帯の目詰まりなどによって妨げられ、それによって眼圧が上昇していることがあります。その場合には、線維柱帯から房水が自然に染み出す道をつくる線維柱帯切除術と、線維柱帯を切開して房水のスムーズな排出を促す線維柱帯切開術によって眼圧を下げることが可能です。適した術式は患者様の状態や緑内障の種類などによって変わります。
なお、手術で眼圧が下がっても定期的に検査を受けて必要な場合には治療を続けることが重要です。
トラベクレクトミー
結膜を切開して強膜を半分はがし、隅角に小さな孔を開けてはがした強膜を被せて何か所か縫合し、結膜を元に戻す手術であり、線維柱帯切除術とも呼ばれています。小さな孔から房水が排出され、結膜がふくらんで濾過胞をつくり、それによって適切な眼圧がコントロールされます。幅広い種類の緑内障に有効とされています。
十分な房水の排出ができていない場合には、強膜を縫合した糸の切断によって術後に房水の排出量を増やすことができます。レーザーによる糸の切断を行えるようになり、術後の眼圧調整を低リスクで行うことができるようになります。
合併症としては、前房消失、悪性緑内障、濾過胞からの感染があります。
術後の注意点
緑内障の手術では、下記の合併症を起こす可能性があります。術後には注意点を守って定期的に経過観察のための受診を行い、少しでも気になることがあった場合にはすぐにご相談ください。
異物感、充血
術後の異物感や充血はほぼ全例に生じます。充血は、ほとんどの場合は2~3週間程度で改善します。異物感は眼の表面の縫合糸が溶けるまでの間(術後4-6週間)持続することがあります。
その後も線維柱帯切除術では結膜がふくらんだ濾過胞ができることから、異物感を生じることがあります。
駆出性出血
手術中に生じる可能性がある合併症で、発症頻度は非常にまれです。眼圧の急激な変動が起こって眼内の血管が破れ、大出血を起こしている状態で、手術を中止する必要があり、失明の可能性があります。
眼内炎
手術の傷から病原体が入って眼内に感染するリスクがあります。発生頻度は約0.1%とされています。眼内感染が認められた場合には、再手術や抗生物質の投与が必要となりますが、失明する可能性もゼロではありません。眼内炎を防ぐためには、術前と術後の点眼を正しく行うことがとても重要です。指示された通りに点眼を行ってください。なお、線維柱帯切除術を受けた場合には、感染リスクを下げるために長期間の抗生物質点眼が必要となります。
高眼圧
手術時の出血や術後の炎症などにより、術後、眼圧が上昇してしまうケースがあります。術後は眼圧の変化を慎重に確認し、高眼圧の場合には縫合糸のレーザー切開、眼球マッサージ、点眼、内服などを行って経過を慎重に観察します。
低眼圧、脈絡膜剥離、濾過胞漏出
眼圧が低くなりすぎることで眼球が適度な形を保てなくなって視力が低下する合併症で、線維柱帯切除術の手術直後に生じることがあります。眼内の水分が明らかに漏れている場合には再縫合が必要になりますが、ほとんどの場合は経過を観察することで改善が期待できます。
術後の視力低下、視野欠損進行
視神経が障害を受けることで、しばらく経過してから視野の欠損や視力低下が起こることがあります。緑内障手術は将来の長期的な眼圧低下による緑内障進行抑制のためのものですが、むしろ手術直後に一時的に眼圧が上昇して術後の視力低下や視野欠損が生じる可能性があります。特に進行した緑内障の場合には高リスクと考えられています。
手術費用
1割負担(片眼) | 3割負担(片眼) | |
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線維柱帯切開術 | 約18,000円 | 約57,000円 |
線維柱帯切除術 | 約18,000円 | 約69,000円 |
※あくまで目安の費用となります。